犯罪・刑事事件の解決事例
#医療過誤

アプガースコア5点(心拍2点、筋緊張1点、反射1点、皮膚色1点)で生まれた新生児に対する蘇生の不手際で、脳性麻痺の後遺症を残した事案

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小林 洋二 弁護士が解決
所属事務所九州合同法律事務所
所在地福岡県 福岡市東区

この事例の依頼主

女性

相談前の状況

妊娠中、特に大きな問題を指摘されることなく、産科クリニックで出産したところ、児の状態が悪く大学病院に搬送されました。低酸素性虚血性脳症後遺症で脳性麻痺となりましたが、親戚の小児科医から、クリニックでの蘇生措置に問題があったのではないかとの指摘をうけているという相談でした。

解決への流れ

相手方は、蘇生措置の不手際は認めず、脳性麻痺の原因も、先天的な素因があるのではないかとして因果関係を争う姿勢を示していましたが、問題点を指摘してくれた小児科の先生からレクチャーを受けるとともに、各種文献を調査し、①気道吸引に使用したカテーテルの選択ミス、②喉頭鏡使用下での気道吸引の遅れの2点を過失として損害賠償を請求しました。その後に出た産科医療補償制度の原因分析報告書は、脳性麻痺の原因は出生後の呼吸障害であることを指摘しましたが、蘇生措置については「一般的である」としていました。そこで、この段階で、改めて相手方に対して、行われた蘇生措置の問題点を指摘し、原因分析報告書の蘇生措置に関する検討は不十分なものであり、責任を否定する理由にはならない旨の書面を送付、相手方も責任を認めて示談が成立しました。

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小林 洋二 弁護士からのコメント

本件は、産科医療補償制度の原因分析報告書において「一般的」とされたにもかかわらず、責任を前提とした示談が成立したケースです。2009年から開始された産科医療補償制度は、分娩に関して発症した脳性麻痺の小児について、合計3000万円の補償(過失の有無を問わない)を行うとともに、再発防止のためにその原因分析を行う制度です。その原因分析は、産科領域についてはかなり丁寧に行われますので、原因分析報告書で、その医療行為が「一般的」といわれてしまうと、責任を問うのはかなり難しいというのがわたしの実感です。しかし、新生児蘇生の領域については、必ずしもそうではありません。これは、産科医療補償制度の原因分析に関わっている医師の圧倒的多数が産科医であり新生児の専門家の関わりが薄いこと、原因分析はあくまでも医療記録を資料として行うものであるところ、産科の記録に蘇生に関する情報が薄いことにあるのではないかと思っています。