この事例の依頼主
30代 女性
相談前の状況
祖父が残した自筆の遺言があります。そこには、私の父にすべて財産を承継させると記載されていました。ところが、祖父が亡くなる前に父は既に他界しており、父の兄弟がその遺言は無効だと言っています。この場合、祖父の相続財産に関する、父や私の相続分はどうなるのかよくわからないので、教えてください。
解決への流れ
遺言が有効で祖父のすべての相続財産が父を通して私に引き継がれるというのは、難しいということがわかりました。ただ、父の兄弟が、祖父から父に対して生前に多額の援助があったのだから、自分たちの相続分を多くしろと主張しているのですが、祖父の遺言でそのような主張に対抗できる可能性があるという助言ももらえ、これをもとに遺産分割交渉を行うことができました。
遺言で、特定の人に相続財産を引き継がせる場合、遺言作成者の亡くなる前に当該承継人が亡くなっていると、原則として、当該承継人の相続人がその権利をそのまま引き継ぐことにはなりません。ですから、当該承継人が遺言作成者より前に亡くなった場合にその相続人にそのまま引き継がせたい場合には、遺言にその旨を明記しておく必要があります。また、被相続人が生前に一定の相続人に財産を贈与していた場合などは、これによる受益(特別受益)を考慮してそれぞれの相続人の相続分を決めることとなっています(相談者の父の兄弟の主張)が、被相続人の意思によっては、そのような特別受益を考慮しなくてよいこととされています。そして、遺言自体が本来の効力を生じなくとも、このような意思が表示されていると解されれば、特別受益について考慮する必要がなくなります。とはいうものの、遺言が無効となっている以上、被相続人の意思を真に反映できたかは疑問が残りますので、遺言を作る際にも、専門家の助言を聞いた方が安心であるといえます。ちなみに、相続財産全てを特定の相続人に引き継がせるという遺言は、他の相続人が遺留分(最低限の相続財産の保証)の権利主張をすれば、その範囲で効力を生じないので、注意してください。