この事例の依頼主
40代 女性
相談前の状況
DV被害者の女性(家族は夫と中学生の長女、小学生の二女)からの相談。夫から暴力を受けているので子供たちを連れて別居する予定。暴力を受けている証拠の写真と診断書は持っている。別居後の生活費が心配。夫は会社員で収入はある。暴力を受けてはいるが、夫のことを愛しているので、別居しながら夫婦でカウンセリングを受けて、いずれは家族4人で生活できるようになりたい。
解決への流れ
身体的暴力を受けており、その証拠もあるので、DV防止法の保護命令申立(接近禁止命令と子への接近禁止命令の申立)をし、その後、婚姻費用調停と夫婦関係調整(円満)調停の申立をすることにした。申立までの予定として、子供たちの学校の終業式の日の夫が帰宅する前に荷物を運び出し、書置きとともに連絡先として弁護士の名刺を置いておく、その日の夜の夫が帰宅した頃を見計らって弁護士から夫に電話連絡をして、警察に相談していること、法的手続に入ることを伝える、ということを決めた。これらのことを予定どおり実行した後、保護命令、婚姻費用調停、夫婦関係調停調停と順次申し立てた。保護命令の申立の直後に裁判官と面接をした上、2週間後に夫を裁判所に呼び出すことになった。夫は保護命令申立の却下を求めたが、裁判所は保護命令を発令した。夫はこれに対して不服申立をしたが、高裁も保護命令を認め、確定した。すると、それまでは戦う気満々だった夫が完全に戦意を喪失し、ほぼ妻の言いなりになってしまい、調停期日を待たずして、婚姻費用及び別居生活を続けながらカウンセリングに通うことを取り決めることができた。そのため、婚姻費用調停と夫婦関係調整調停は取下げた。
保護命令によって夫が完全降伏したことには私も驚きました。妻によると、夫は「裁判所に呼び出されたとき、自分は犯罪者になるのかと思った。弁護士が鬼のように怖かった」と言っていたそうです。法廷では、裁判官も裁判所書記官も夫の報復が怖かったのかマスクをしていました(コロナ前のことです)。裁判官が余り強いことを言わないので、私が指摘するしかないと思い、「女性に頭突きをするなんて小学生の男の子でもそんなことしませんよ。あなたのやったことは異常だ」と言ったので、それが効いたのではないかと思います。