犯罪・刑事事件の解決事例
#人身事故 . #慰謝料・損害賠償

【眼窩底骨折・上顎骨骨折等】<損害賠償総額約3000万円獲得>側面複視と顔面線状痕により併合11級を獲得し、裁判により逸失利益満額を獲得した事例

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木村 治枝 弁護士が解決
所属事務所弁護士法人小杉法律事務所福岡オフィス
所在地福岡県 福岡市早良区

この事例の依頼主

20代 女性

相談前の状況

Mさんは、事故後時、専門学校の学生でしたが、自転車に乗っていた時に四輪車にはねられてしまいい、眼窩底骨折や上顎骨骨折をしてしまいます。保険会社からは、自転車と四輪車の動いている者同士の事故だと、過失割合は自転車35:四輪車65になると説明を受けましたが、それが納得いかず、弁護士に相談することにしました。★法律相談Mさんは熊本にお住まいだったため、電話相談という形で法律相談を行いました。Mさんからご事情をお伺いすると、Mさんは左右確認のために、自転車を運転して道路横断しようとしたところをはねられたのではなく、片足で地面を蹴ってゆっくりと進み、左右確認の後に進もうとしたところ、突然出てきた車にはねられてしまったとのことでした。過失割合については、別冊判例タイムズ38号「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(全訂5版)に記されている338個の図の中から過失割合が決められることが多いです。この本を見ると、確かに、形式的には、保険会社が言うとおり、自転車35:四輪車65の過失割合となりそうです。しかしながら、同書には多くの例外も定められていて、その383頁を見ると、「低速の自転車(普通人の小走り程度以下の速度。おおむね時速10㎞以下である場合。)に対する関係での四輪車・単車の注意義務の程度としては,小走りの普通人に対する注意義務の程度とほぼ同視し得るし,自転車が低速で走行している場合,事故発生の危険性が小走りの普通人に比較して高まるとは一概にいえないこと,実務上,低速の自転車と四輪車・単車との事故については,事実上,歩行者と四輪車・単車との事故に関する基準が参照されていたこと等に照らすと,低速の自転車については,歩行者と同視し得る余地がある。」と記載されています。Mさんのケースは、まさにこの例外に該当すると考えられたため、過失割合について戦うべく、受任することにしました。

解決への流れ

1 後遺障害等級の獲得Mさんは、眼窩底骨折や上顎骨骨折等の傷害により、顔に傷と、横の物を見るときに物が二重に見えてしまうという障害(側面複視)が残ったことから、後遺障害診断書を作成してもらい、側面複視の後遺障害等級13級2号と、外貌醜状の後遺障害等級12級14号を獲得し、併合11級であると認定されました(自賠責保険金331万円)。2 示談交渉の決裂併合11級の後遺障害等級をもとに示談交渉に臨みましたが、保険会社からは、①自転車対四輪車の交通事故であるため過失割合は35:65になる。②顔に傷による仕事への影響はないので、その点の逸失利益は認められないとの回答がなされました。そうすると、自賠責保険金のほかにもらえる賠償額というのはほとんど無くなってしまいます。3 民事裁判(熊本地方裁判所)熊本地方裁判所では、こちら側の主張がほぼ全面的に認められ、勝訴的な和解で解決することができました。(1)入院付添費用・通院付添費用・自宅付添費用付添費用(治療期間中の介護費用のこと)には、入院付添費用・通院付添費用・自宅付添費用の3種類があり、重度の後遺症の場合には、これらが認められることになっています。Mさんの後遺障害等級は併合11級ですから、重度の後遺症とはいえませんが、お母様に付添看護の状況について説明をしてもらったり、カルテからご家族の付添いの必要性などを立証することにより、入院付添費用・通院付添費用・自宅付添費用のすべての付添費用が認められました。(2)学費Mさんは、交通事故によって2か月強入院することになり、その間の学費が無駄になってしまいました。専門学校にも協力いただき、この点を立証したところ、裁判所は学費分として70万円以上の賠償を認めてくれました。(3)就職遅延休業損害は当然に認められましたが、交通事故のせいで就職が遅延してしまったことの賠償として更に220万円以上の上乗せがされました。(4)逸失利益Mさんの後遺障害等級併合11級というのは、側面複視の13級と外貌醜状障害の12級によるものです。この点、外貌醜状障害というのは、整形外科的な後遺症とは異なり、体の動きには問題がないため、芸能人やモデルさんなどの顔を使う職業でない限り、逸失利益が制限されてしまうことが多いです。11級の場合の労働能力喪失率は20%とされていますが、外貌醜状障害の逸失利益が認められないとなると、側面複視の13級のみで逸失利益を判断することになり、労働能力喪失率は9%とされてしまって、半額以下となってしまいます。Mさんは将来、測量士として就職予定でしたから、外貌醜状障害が仕事に直接影響する可能性は高いとはいえない状況でした。そこで、醜状障害であるが20%の労働能力喪失率を認めるべきであるという戦い方ではなく、側面複視というのは測量士の仕事上9%にはとどまらない支障を来すという方針で戦いました。具体的には、測量士協会に問い合わせをして、測量士の具体的な仕事内容を証拠化し、側面複視が残ってしまった場合の仕事の具体的支障について立証を行いました。そうしたところ、裁判所は、Mさんの労働能力喪失は20%制限され、それが67歳まで続くという満額の認定をしてくれました。(5)過失割合刑事記録やMさんの話などから、自転車vs四輪車の交通事故ではなく、歩行者vs四輪車の交通事故であるとの立証に成功し、保険会社側の自転車35:四輪車65という主張が退けられ、過失割合10:90の和解解決となりました。(6)総額約3000万円獲得

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木村 治枝 弁護士からのコメント

【解決事例のポイント】① 醜状障害の後遺症の場合は逸失利益が制限されることが多いが満額の逸失利益を獲得② 自転車事故であったため過失割合35:65を主張されていたが、歩行者と同視させ、過失割合10:90で解決③ 休業損害のほかに、就職遅延分や無駄になった学費約300万円を上乗せ④ 入院付添費・通院付添費・自宅付添費の各付添費をすべて認定⑤ 和解金や自賠責保険金のほかに人身傷害保険金も獲得し、総額約3000万円獲得【コメント】過失割合や仕事の支障の立証は丁寧に自転車対四輪車の交通事故の過失割合が、立証によっては、歩行者対四輪車の交通事故の過失割合になることを知らない方は結構いらっしゃいます。これは、弁護士もそうですし、裁判官でも、理解不足の方が見受けられます。丁寧な立証をすれば、自転車事故であっても歩行者と同視されることがありますので、自転車事故で過失割合についてお困りの方は、被害者側専門の弁護士にご相談されることをおすすめします。また、逸失利益の判断においては、●級だと●%というように機械的な運用がなされることが多いですが、本件のように、測量士の仕事と側面複視の相性の悪さを、測量士協会の協力を得ながら立証することで、倍以上の逸失利益を獲得できることもあります。逸失利益の金額も、弁護士によって変わるところですので、被害者側専門の弁護士に相談されることをおすすめします。