この事例の依頼主
60代 男性
60代の男性経営者T男さんは、ある日知り合いから「大規模掲示板にあなたのことが書かれている」「あれは事実なの?」と聞かされます。T男さんはその投稿のことを知っていましたが、そこまで害悪とは思っておらず放置していました。しかし、投稿には事実無根の内容がT男さんの実名とともに書かれており、気持ちの良いものではありません。その投稿を削除できるものならしたい、そう考えて弁護士に相談することにしました。
T男さんについて書かれた事実無根の投稿は、大規模掲示板「5ちゃんねる」にされていたものでした。相談にお見えになったのは2020年でしたが、その投稿は2007年になされたもの。古い投稿であったため、発信者情報開示は諦めて、削除のみを目的とすることにしました。T男さんのケースでは、実名が載っていた時点で、5ちゃんねるのガイドラインで定義されているプライバシー侵害に該当し、削除は認められるのではないかという見込みが立っていました。5ちゃんねるは投稿削除の専門チームを内部に持っているようで、実名が載っていれば比較的削除には寛容に対応しているように思えます。一方、同様の大規模掲示板である「2ちゃんねる」は削除担当者はボランティアで運営されているようで、削除のガイドラインは存在するものの基準は曖昧で、5ちゃんねるに比べると削除が難しい印象です。5ちゃんねるに削除申請を行うには、削除対象のスレッドと投稿を特定し、その内容のどの部分がどのような侵害にあたるのかを説明し送ります。プライバシー侵害なのか、名誉毀損なのか、書き込みが事実と異なるのならどう違うのかを細かく説明します。合わせて、依頼者の確認書、免許証の写し、送り主である私が弁護士である照明を委任状とともに送付します。すると、その内容を5ちゃんねる側で確認し、削除します。その間、通常約1週間程度です。T男さんのケースも、無事上記のフローで5ちゃんねるの投稿自体は削除されました。しかし、問題はこれでは解決しません。大規模掲示板には、そこで書かれた内容をそのまま転載している別会社の運営する「ミラーサイト」があり、ミラーサイトに掲載されている内容は、大元の5ちゃんねる(2ちゃんねるも同様)の投稿を削除しても消えてくれません。そこで、また別途ミラーサイトへの投稿削除依頼が必要になります。ミラーサイトにはたいてい、削除申請を受け付けるフォーマットがあります。そのフォーマットから「5ちゃんねるの大元の投稿は消えています」と伝えると消してくれます。しかし、今回投稿削除を依頼したミラーサイトでは、投稿だけを削除するのではなく、そのページ全体を削除しました。その結果、投稿がなされていたミラーサイトのページ自体は消えたのですが、Googleの検索結果にキャッシュが残ってしまいました。そこで、今度はGoogleにキャッシュの削除申請を行う必要がありました。ミラーサイトは1つだけではありません。ミラーサイトだけで100程度あると言われています。検索をして引っかかったミラーサイトに削除申請をして投稿を消しても、潜在的に残っているミラーサイトが次から次へと検索に現れてきます。そこで、2〜3個のミラーサイトを私が削除し、今後検索して現れたものに関しては、T男さんご自身で削除申請を行えるよう、例文をご用意しました。5ちゃんねるの投稿が消えていれば、ミラーサイトの削除申請は弁護士でなくても行えます。そうすることで、弁護士費用も節約することができます。
10年以上前の投稿でしたが、無事に削除することができ、T男さんは大変喜んでおられました。投稿内容を削除する場合、その内容が事実と異なることを証明する必要があります。そのためには、事細かに正確な内容をご本人からお伺いします。ご本人に通り一遍のヒアリングをするだけでは、事実とどう異なるのかを聞き出すのは難しいものです。お伺いしながら、こちらで整理して、分類して、異なる点を抽出して、「ここがこう違うのではありませんか?」と提案することを心がけています。インターネットが広く普及した現在、同様のお悩みを抱えていらっしゃる方は多いと思います。ご自分で諦めず、専門家に相談することで解決できることもたくさんあります。また、法律事務所は怖い、弁護士は堅いという印象をお持ちの方も多いかと思います。お打ち合わせの際には、ご不安に寄り添いながらお話をお伺いすることを心がけています。一方的に法律のお話を押し付けるようなことはありませんので、安心してご一報ください。